vol.7 急性胃腸炎と経口補水療法

空気が乾燥して気温が下がるこの時期になると「急性胃腸炎」が流行します。特に今年は例年より早く、患者数も多く報告されています。小さなお子さんから高齢者まで感染した時には水・電解質の補給が重要となります。 ・ウイルス性胃腸炎 ノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルス、インフルエンザウイルスなどがあり、主要症状は下痢、嘔吐、発熱、12~72時間の潜伏期間を経て急激に発症します。典型的な場合、まず発熱と嘔吐で始まり、続いて頻回の水様便がおこり、1日10回以上に及ぶ事もあります。2日目以降には嘔吐が少なくなります。症状は3日から7日間程度で治癒することがほとんどです。 <ノロウイルス> 潜伏期間は1~2日。嘔吐、下痢、腹痛が主症状で、発熱、頭痛、筋肉痛なども見られます。集団発生が多いことも特徴です。 <ロタウイルス> 潜伏期間は1~3日。冬に最も多く、乳幼児の急性下痢症として知られています。通常、嘔吐が先行し下痢が続きます。典型的な場合、白色の下痢便となり、下痢の回数も多い傾向です。嘔吐、下痢、発熱が主症状でノロウイルスよりも重症化しやすいのが特徴です。 ・細菌性胃腸炎 サルモネラ菌、カンピロバクター菌、腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌などがあり、飲食物などを介して経口感染して発症します。潜伏期が短く、嘔吐、腹痛が主症状です。 夏季に多いことが特徴で、ウイルス性胃腸炎には抗菌薬は効かないため通常医師からの処方はされません。食中毒など細菌感染が原因の場合は抗菌薬による治療が必要な場合があります。

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嘔吐や下痢は病原体を早く体の外に出そうとする、体の大切な防御反応の一つです。重症の場合は別ですが、下痢止め、吐き気止めの使用は必ずしも必要ではありません。大切なのは脱水症状を回避する事にあり、水・電解質の補給がとても重要です。日常かく汗からも電解質は失われますが、下痢・嘔吐・発熱の時は更に多くの電解質が失われます。その電解質の補給として最近注目されているのが経口補水療法です。 ・経口補水療法(Oral Rehydration Therapy) 軽度から中等度の急性胃腸炎および合併症に対して、2段階の治療を行います。 ①水分補給 経口補水液の投与により、すでに失われた水分・電解質を補給します。 ②現在進行中の水分・電解質の喪失を補充するとともに食事を適切に摂れるようにします。   ※この方法は、少なくとも経静脈輸液(点滴)と同等の効果を有する報告があります。 ①は迅速に行い(3~4時間以内)少量を回数多く飲ませる事がポイントです。最初は5cc(ティースプーン1杯)から初め、これを5分おきに飲ませ、4時間ほど行います。 一度に沢山飲むと吐いてしまい、かえって症状が悪化する事があるので注意が必要です。5ccでも吐くようなら、15~30分後に5ccを再び飲ませ、2日目も同様であれば30分後にもう一度挑戦してみましょう。 6回行なっても補給出来ない時、また以下の症状がある時は受診しましょう。 ・嘔吐がずっと収まらない・ひどく元気がなくなってきた・12時間以上おしっこが出ていない・涙や唾液がでない・眼がくぼんでいる・皮膚、舌、口が乾燥している・血便がある・緑色の嘔吐がある・経口補水液が飲ませられない・呼吸が速く眠りがち・機嫌が悪い・3ヶ月未満の乳児で38℃以上、3~36ヶ月の乳幼児で39度以上の熱がある ②は脱水が是正されたら年齢に合った非制限の食事を与えます。 授乳中の児に対しては母乳を継続して与えます。ミルクを用いる場合は、薄めたミルクは推奨されず、特殊ミルクも通常は不要です。離乳食は普段食べているものをあげましょう。(冷たいもの、糖分の多いもの、刺激の強いものは避けましょう)また、下痢・嘔吐が続く時は経口補水液を追加して与えましょう。 ・経口補水液 失われた水分や電解質を補うために、ナトリウムなど電解質とブドウ糖が一定の割合で配合されています。適度な濃度のブドウ糖はナトリウムの吸収を促進し、結果的に水分の吸収が促進されます。 ・スポーツドリンク 電解質や糖質は含まれていますが、経口補水液に比べると、一般に電解質濃度は低く、糖分は多い組成になっています。スポーツドリンクはあくまで健康な人の通常のどの渇きや、軽いスポーツ時の水分補給に適している飲料で、脱水状態の改善には向いていません。 (糖の濃度が高すぎると浸透圧が高くなり下痢がひどくなる場合があります)

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