物忘れ外来に受診された方が持ってきて下さる処方せんには、認知症を進行させないための薬剤と一緒にビタミン剤が処方されていることが多いです。また、軽度な認知機能低下の方はビタミン剤だけが処方されていることもあります。
ビタミンB・ビタミンE・葉酸です。
特にその中のビタミンB12ですが、認知症の人と健康な人の脳を比べると認知症の人は少ないそうです。認知症の人にビタミンB12を投与すると感情障害、せん妄、意欲低下などの認知症に伴い起こる症状が軽減すると言われているそうです。
このビタミンB12の体内での役割は、①血液の中にある赤血球生成に大きく関わりがあります。また、②中枢神経・末梢神経の働きを維持させます。その他にも③脂質やタンパク質の代謝のために必要です。
① 赤血球の中にあるヘモグロビンが体内の細胞に酸素を運びます。細胞に酸素が届かないと脳も身体も正常に働けません。そのヘモグロビンを作るためにはこのビタミンB12と鉄剤が必須です。
② 脳からの指令を伝達する神経を正常に働かせるためにもビタミンB12が必要です。末梢神経が正常に働かなくなると手足のしびれがでることがあります。脳に対しては、集中力の低下や気力低下などの症状が出やすくなります。
③ 認知症の中で多くを占めるアルツハイマー型認知症の場合は、脳細胞の萎縮が見られます。脳細胞生成のためにはタンパク合成・核酸合成が必要ですがこのビタミンB12が合成に関わっています。
ならば、皆ビタミン剤を処方してもらえば認知症予防になると考えますが、残念ながら我が国の医療保険制度には予防的な薬剤処方は認められておりません。
普通に生活していればビタミンB12不足にはならないと言われていますが、食生活が原因か昨今不足している人が多いそうです。また、胃腸の手術をされた方はビタミンB12の吸収が低下して不足状態になります。胃の手術を受け方は、ビタミンB12が処方され服用されている方もいらっしゃいますが、健常者の場合は、普段の食事から摂ることが必要です。
そこで、ビタミンB12が多く含まれている食品を調べてみました。
ビタミンB12は動物性食品に多く含まれていることが分かりました。
牛肉・豚肉、鶏肉、特に肝臓(レバー)には沢山のビタミンB12が含まれています。また、魚介類のサケ・イクラ・イワシ・うなぎ・マグロ・牡蠣・しじみ・アサリ・帆立などにも含まれています。
乳製品の牛乳・チーズ・ヨーグルト、卵黄など結構いろいろなものに含まれています。例外的に植物性食品の海苔にもビタミンB12が多く含まれています。これは藻類に付着している微生物の働きによるものだと考えられています。
結構色々な食品に含まれているので、バランス良い食事をしていれば不足になることは少ないのですが、菜食主義者の方の場合は、ビタミンB12不足にならないように海苔やサプリメントで補うことをお勧めします。
ビタミンB12は水溶性のビタミンなので過剰に摂っても、通常は尿から排泄させるので体内に蓄積し問題が起こるようなことは比較的少ないと考えられます。
少しでも食生活を意識することで認知症のリスクを減らすことができればよいかと思います。
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