先週、連日で、大村智・北里大学特別栄誉教授のノーベル生理学・医学賞、梶田隆章・東京大学宇宙線研究所所長のノーベル物理学賞の受賞が決定といううれしいニュースが入ってきました。お二人の受賞はとても喜ばしい事です。特に、山梨県民、また薬に携わる仕事をしている身としては、大村教授の受賞は、特別うれしく、誇らしく思います。
大村教授は、山梨県韮崎市の出身で、山梨大学を卒業後、都立高校定時制の教諭になり、研究者に転身したという異色の経歴の持ち主です。その業績はもちろんですが、人としても素晴らしく、その人生訓の数々は、心を打たれ、学ぶべきことが多くありました。
農家の長男として生まれ、「農作業を通じて科学する心を養われた」と語り、祖母からは「人のためになることが大切」と教えられ、定時制高校の学生が働きながら一生懸命に勉強する姿に感銘を受け、ご自分の仕事を「微生物の力を借りているだけ、微生物がやってくれた仕事を整理したようなもの」と話し、薬の特許権を放棄し多くの人々に薬を提供する、そんなお人柄がノーベル賞につながったように思います。
山梨県への思いも強く、故郷の韮崎市に、美術館を開館し寄贈、温泉を掘り、時代を担う子供たちのためにと「山梨科学アカデミー」を設立し、著名な研究者を招いた講演会を開いたり、県内の小中学校に講師として派遣しているそうです。しかもこれを設立したのは20年前というから驚きです。
大村教授が発見した微生物から開発されたイベルメクチンは、アフリカや東南アジア、中南米などに住む10億人もの人々を寄生虫病から救いました。日本では疥癬の治療に使われています。疥癬とは、ヒセンダニが人の皮膚に寄生して起こる、激しいかゆみを伴う皮膚の病気です。感染するので、老人ホームや介護施設では集団発生が問題となっていますが、イベルメクチンを1回~2回服用することでほぼ治ると言われています。犬のフィラリア症予防薬としても使われているそうです。皆さんの中にももしかしたらお世話になった方もいらっしゃるかもしれませんね。
今後も、山梨県から、大村教授に続く科学者が出てくれればうれしいです。
本当におめでとうございます!
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